あら汁を啜ったあと、唇がわずかにペタつく感覚を覚えたことはないだろうか。それこそが、鯛の骨と皮、軟骨から溶け出した天然のゼラチン質、すなわち加熱によって抽出されたコラーゲンだ。骨付き肉を長時間煮込む「ボーンブロス」が世界的な健康トレンドとなって久しいが、日本には古くから鯛のあら汁という完璧な先例が存在していた。
身に含まれるイノシン酸と、昆布だしのグルタミン酸が混ざり合うことで生まれる相乗効果は、化学調味料の刺激に慣れきった舌を優しくリセットする。ビタミンB群やカルシウムも豊富に含まれており、過酷な情報過多に晒される現代人にとって、これ以上胃壁を優しく撫でてくれるスープは他にない。