真冬のオホーツクは厳しい。吐く息は一瞬で白く凍りつき、手袋を外せば数十秒で指先の感覚が麻痺していく。しかし、キタキツネにとってはこの極寒こそがもっとも美しく輝く舞台だ。1月から2月にかけての毛並みは「モフモフ」という軽薄な言葉では到底足りないほどの厚みと気品を帯び、雪の乱反射を受けて琥珀色に燃え立つ。
近年、過熱するインバウンド狂騒曲に疲れた国内の旅行者たちが、あえて喧騒を避けてこの静かな山あいの地を目的地に選んでいる。午前10時、開園直後の静寂。まだ誰の足跡もついていない新雪の上に、一本の細い狐の足跡がすっと伸びている。それを見つめるだけで、何時間も列車や車を乗り継いできた疲労が吹き飛んでしまうと常連の旅人は語る。観光地化されすぎていない、素朴な北の日常がそのまま残されているのだ。