フラッシュモブ(flash mob)という言葉は、短時間で現れることを指す「フラッシュ(flash)」と、群衆を意味する「モブ(mob)」を組み合わせた造語です。そのフラッシュモブの意味は、インターネットやSNSを通じて不特定多数の人間が公共の場に予告なく集まり、目的のパフォーマンス(ダンス、静止フリーズ、合唱など)を突如披露した後、何事もなかったかのように即座に解散する一連のゲリラ的行動を指します。
その発祥の歴史を遡ると、起源は2003年5月の米国ニューヨークにあります。雑誌編集者であったビル・ワシック(Bill Wasik)氏が、電子メールを通じて集めた約130名の参加者とともにメイシーズ百貨店の絨毯売り場に突如集結し、「全員で高級絨毯を取り囲んで祈るような仕草をする」という社会実験的パフォーマンスを行ったのが世界初の事例と記録されています。当初の目的は誰かを感動させることではなく、インターネットがいかに簡単に群衆を組織できるか、そして大衆の追従性を可視化・批評する「悪ふざけと現代アートの融合」でした。
その後、2000年代後半に欧米の通信会社やアパレルブランドが駅構内や広場で行ったゲリラプロモーション動画がYouTube上で億単位の再生回数を記録したことで、商業的イベントやエンターテインメントへと変容を遂げました。この潮流が日本に本格上陸した際、公共空間での無許可集会に対する法規制(道路交通法や施設管理権)が欧米よりも格段に厳しい背景から、ホテルや結婚式場、テーマパークの貸切スペースといった「閉ざされた祝祭空間」へと演出の主戦場を移していきました。これが、日本特有の「結婚式余興や公開プロポーズの定番サプライズ」という独自フォーマットが定着した大きな転換点です。