下まぶたのできものに直面した際、鑑別の第一歩となる決定的な手掛かりは「痛みの有無」と「色・形状」の2点です。一般的に「ものもらい」と総称されがちな病変ですが、眼科領域では全く異なる病態として厳格に区別されています。
まず、触れても痛くない硬いしこりが生じている場合、その筆頭候補となるのが霰粒腫(さんりゅうしゅ)です。まつ毛の生え際にあるマイボーム腺(涙の蒸発を防ぐ油分を分泌する器官)の開口部が皮脂や老廃物で詰まり、分泌物が内部に蓄積して肉芽腫(慢性的な炎症細胞の塊)を形成した状態を指します。細菌感染を伴わないため発赤や強い痛みはほとんどなく、皮膚の下に小豆大から大豆大のコリッとした球状の硬結を触れるのが典型的な特徴です。
一方、触れるとズキズキと痛む、あるいは瞬きをするだけで違和感や熱感を伴って赤く腫れ上がるものは、急性化膿性炎症である麦粒腫(ばくりゅうしゅ)です。黄色ブドウ球菌などの常在菌がマイボーム腺やまつ毛の毛根(ツァイス腺・モル腺)に感染して化膿する病態で、初期から自発痛や圧痛が現れます。麦粒腫の早期治し方としては、初期段階での抗菌点眼薬や内服抗菌薬の投与、患部を清潔に保つ保存的療法が第一選択となります。
次に、多くの読者を悩ませる下まぶたの白いできものについてです。代表格である稗粒腫(はいりゅうしゅ・ひりゅうしゅ)は、直径1〜2ミリ程度の白〜黄白色の硬い球状丘疹で、毛包や汗腺の出口に角質(皮膚の垢)が袋状に溜まった良性の角質嚢腫です。痛みやかゆみは一切なく、良性であるため医学的な緊急性はありませんが、自然に角質が排出されることは稀で、長期間そのまま残存する傾向があります。
これと混同されやすいのが汗管腫(かんかんしゅ)です。思春期以降の女性に好発し、エクリン汗腺の導管が増殖して生じる良性腫瘍で、平らでやや黄色〜肌色に近い扁平な小結節が目の下に多発します。さらに、中高年以降で鼻や額だけでなく目の下にも見られる「脂腺増殖症」は、皮脂腺が過剰に発達した1〜5ミリ程度のドーナツ状(中央がやや窪んだ)黄色丘疹であり、ニキビとは異なり自然消退せず加齢とともに徐々に増大します。病態ごとに原因が根本から異なるため、外見だけで一括りに判断することは極めて危険です。