インターネット上の掲示板やSNSでは、「パエリアに入っているサフランにも毒があるのか」「サフランの花を庭に植えると危険なのか」といった過度な不安を煽る書き込みが散見されます。しかし、ここには明白な情報の混同が存在します。
まず第一に、料理用スパイスとしてのサフランは極めて安全です。通常のパエリア4人前に使用される乾燥サフランはわずか0.1g〜0.2g程度(めしべ数十本分)。中毒を起こす危険水準(5g)に達するには、一度に通常の25〜50回分ものサフランを一人で貪り食わなければならず、現実の食生活ではまず起こり得ません。世界で最も高価な香辛料(1kgあたり数十万円から数百万円)であるため、経済的にも過剰摂取は極めて困難です。
第二の盲点は、「サフランの花そのものに猛毒がある」という都市伝説です。前述したように、危険なのはイヌサフラン(Colchicum autumnale)であり、真正サフラン(Crocus sativus)ではありません。イヌサフランはコルヒチンという劇薬成分を含み、花粉や葉汁に触れるだけでも皮膚炎を起こすリスクがありますが、真正サフランの花粉や花びら自体にそのような劇毒性はありません。
園芸店で購入した正規のアヤメ科サフランであれば、室内で水なしで転がしておくだけでも美しい紫の花を咲かせる「コルチカム・サフランの水なし栽培」として親しまれるほど強健で安全な植物です。毒草と薬草の境界線を見失ったネットの言説に惑わされないリテラシーが求められます。