インターネット上の掲示板やSNSでは、引っ越し後に「専有面積20㎡・6畳と書いてあったのに、ベッドを置いたら足の踏み場もない」「想像していたより遥かに狭い」といった悲痛な体験談が後を絶ちません。なぜ広告の数値と実際の生活空間にこれほど大きな乖離が生じるのでしょうか。不動産仲介の現場を取材すると、そこには業界特有の構造的な要因が存在しています。
第一の落とし穴は、広告に記載されている専有面積と居室の畳数目安のからくりです。専有面積とは「その入居者だけが独立して使用できる床面積の合計」であり、リビングや寝室などの居住スペースだけを指す数値ではありません。以下の設備・スペースはすべて専有面積の平米数に含まれています。
- 玄関ホール・廊下
- キッチン・調理スペース
- 浴室・シャワールーム
- トイレ・洗面脱衣所
- クローゼット・押し入れ・シューズボックスなどの固定収納
- 室内の柱・パイプスペース(PS)
一般的な単身向け賃貸住宅では、ユニットバスやキッチン、玄関、廊下、収納だけで約8㎡〜10㎡(畳にして約5〜6畳分)を占有します。そのため、募集チラシに「専有面積20㎡」と記載されていても、純粋な居住スペースは差し引き10㎡〜12㎡程度、すなわち「約6畳」が物理的な限界となります。さらに収納が狭い物件では、タンスや衣装ケースを居室内に置かざるを得ず、体感面積は4.5畳以下にまで圧迫されてしまうのです。
第二の落とし穴が、「壁芯面積(へきしん)」と「内法面積(うちのり)」の測定基準の違いです。マンションなどの集合住宅のパンフレットや賃貸広告に記載される専有面積は、基本的に「壁の中心線で囲まれた面積(壁芯面積)」で計算されています。しかし、入居者が実際に使えるのは「壁の内側で囲まれた面積(内法面積)」です。壁の厚み分が差し引かれるため、実際の有効面積は広告表記より約5%〜8%目減りします。25㎡と書かれた物件であれば、実質的に使える面積は23㎡前後に減少している点を見落としてはなりません。