温泉宿の真価を左右するもう一つの主役が料理だ。今回の再開発に伴い、厨房のバックヤードでも前代未聞の改革が静かに進行していた。地元奈良の大和野菜や極上の和牛、清流が育んだ川魚など、厳選された旬の味覚を極上の会席に昇華させる試みである。
「仕入れのルートから出汁の取り方に至るまで、すべてを一から見直しました」。料理長が明かすその言葉には、溢れんばかりの情熱が宿る。目指したのは、味わった瞬間に宇陀の景色が脳裏に広がるような一皿だ。激変する日本の観光・温泉宿泊産業において、本物の価値を提供し続ける姿勢こそが、長年のファンを惹きつけてやまない「美味しさの裏側」にある秘密にほかならない。