天平勝宝4年(752年)、東大寺大仏の眼に墨を入れた開眼導師こそが彼だった。2026年3月、東京大学とインド国立芸術センター(IGNCA)の合同チームは、正倉院に保管されてきた「開眼の筆」に付着していた極小の有機物から、当時の環境微粒子を高精度キャプチャすることに成功した。
解析結果は衝撃的だった。筆の柄に使われていた木綿の繊維構造や微量な香料成分は、当時の南インド・チョーラ朝の影響下にあった港町から直接持ち込まれた可能性が高いと結論付けられた。奈良の都に集まった万単位の人々が目撃した光景は、単なる国内の宗教行事ではない。世界最高峰のグローバル・イベントだったのだ。