窩洞形成後の歯髄保護処置において、混同されやすい概念が「裏層(ライニング)」と「ベース(基底)」です。両者は目的・厚み・使用材料において明確な違いが存在します。
裏層は、露髄寸前の極めて薄い残存象牙質に対し、0.5mm未満の極薄い塗布膜を形成して象牙細管を封鎖し、薬剤による歯髄鎮痛・消炎や第三象牙質の形成誘導を主目的に行われます。代表的な材料には水酸化カルシウム製剤やMTAセメントが挙げられます。
一方、ベースセメントの主目的は「熱遮断」「咬合圧の均等分散」「窩洞形態のアンダーカット修正」です。金属修復物からの温度変化を遮断し、充填時や咀嚼時の咬合圧によって残存象牙質や歯髄が破壊されるのを防ぐため、通常0.5mm〜1.5mm程度の厚みを持たせて裏打ちします。
窩洞が深い症例では、最深部に裏層処置を施した上でベースセメントを積層し、その上に最終修復を行う二段階の歯髄保護アプローチが基本手順です。