男子100mの歴史は、わずか0.01秒を削り落とすための途方もない戦いの連続でした。電動計時が公認された1968年以降の世界記録の推移を辿ると、ボルトの登場がいかに異次元のパラダイムシフトであったかが浮き彫りになります。
- 1968年 ジム・ハインズ(アメリカ):9秒95(人類初の公認9秒台)
- 1991年 カール・ルイス(アメリカ):9秒86(東京世界陸上で激闘の末に樹立)
- 1999年 モーリス・グリーン(アメリカ):9秒79(9秒80の壁を突破)
- 2005年 アサファ・パウエル(ジャマイカ):9秒77(ジャマイカ勢の台頭)
- 2008年5月 ウサイン・ボルト:9秒72(ニューヨークで初の世界新)
- 2008年8月 ウサイン・ボルト:9秒69(北京五輪・胸を叩きながらの衝撃記録)
- 2009年8月 ウサイン・ボルト:9秒58(ベルリン世界陸上で0.11秒の大幅更新)
通常、100mの世界記録は数年から十数年をかけて「0.01秒〜0.02秒」ずつ更新されていくのが通例でした。しかしボルトは、北京五輪からベルリン世界陸上までのわずか1年あまりで、記録を一気に「0.14秒」も短縮しました。この進化の飛び級こそが、後続世代が容易に追いつけない最大の要因となっています。