教育現場や大手予備校が公開する模擬試験の設問別正答率データを精査すると、原子の構造に関する大問のなかで、価電子を問う小問の正答率が予想以上に落ち込むケースが散見されます。知識としては知っているはずの受験生が、なぜ現場でミスを誘発してしまうのでしょうか。
大手予備校関係者の分析によると、失点の約8割は「希ガスの価電子問題」と「ヘリウムの最外殻電子数」に集中しています。実際の模試解答用紙には、以下のような誤答パターンが定型化して現れます。
「問題:ネオン原子(Ne)の価電子の数を答えよ」という問いに対し、反射的に「8」と記してしまうケースです。生徒へのヒアリング調査や学習面談の記録によれば、頭の中で電子配置図を描き、「L殻に電子が8個入って満杯になっているビジュアル」を想起した結果、そのまま「個数=8」とアウトプットしてしまう認知のショートカットが起きています。
さらに陰惨なトラップとなるのがヘリウムです。「ヘリウムの最外殻電子数はいくつか」と聞かれて「0」と答えてしまったり、逆に「ヘリウムの価電子数はいくつか」と聞かれて「2」と答えてしまったりする相互の混同が後を絶ちません。認知心理学の観点からも、対照的な二つの概念(最外殻電子と価電子)を「数字の違い」だけで暗記しようとすると、試験の緊張下で符号の逆転が起きやすいことが指摘されています。