この特異な先祖像がどのようにして誕生したのか、その裏舞台にも興味深い事実があります。原作者である故・長谷川町子先生は、初期の原作漫画の端々にも武家風刺やナンセンスな言葉遊びを巧みに取り入れていました。アニメ制作陣が長谷川イズムを受け継ぎ、家庭劇の身近な行事である「お盆」「お彼岸」をより親しみやすく描くために練り上げたのが、磯野藻屑源素太皆の具体的な設定とキャラクター性です。
さらに注目すべきは担当声優のキャスティングです。磯野藻屑源素太皆の声を担当しているのは、歴代の波平役を務めた声優陣です。
初代・波平役を40年以上全うした名優・永井一郎氏が重厚さとコミカルさを同居させた名演で命を吹き込み、2014年に役を引き継いだ茶風林氏もまた、波平と素太皆の一人二役を情緒豊かに演じ続けています。同じ声、同じ顔の先祖が画面越しに後孫と掛け合うギミックは、声優界の職人芸があってこそ成立する贅沢な演出です。