タイのカレーといえばグリーンやレッドを連想しがちだが、チェンマイの「ゲーンハンレー」は全く異なる顔を持つ。隣国ミャンマーの影響を色濃く受けたこのカレーは、ココナッツミルクを一切使用しない。豚バラ肉や豚肩ロースを、タマリンドの甘酸っぱさ、生姜の千切り、そして独自の配合によるハンレースパイス(乾燥スパイスのミックス)でじっくりと煮込んだ料理だ。
スプーンを当てるだけで崩れるほど柔らかく煮込まれた豚肉に、じわっと染み出た旨味。酸味と甘みが絶妙なバランスで溶け合い、後から心地よい辛さが追いかけてくる。もち米(カオニャオ)を指先で丸め、この濃厚なルーに浸して食べる瞬間こそ、北部の食文化の真髄を味わえる贅沢なひとときだ。