この宿の夜を特別なものにしている最大の要素が、館内にある食事処「六百居(ろっぴゃくい)」だ。一般的な旅館の和懐石を期待して行くと、良い意味で予想を裏切られる。ここは精肉店が直営する焼肉居酒屋そのものだ。目の前の網でジューと音を立てて焼き上がる厚切り肉の香ばしさが、食欲を極限まで刺激する。
厳選された黒毛和牛や地元産の豚肉、ジューシーなホルモンまで、肉の部位ごとの個性を引き出すカットと味付けが見事だ。自分のペースで好きな焼き加減を見極め、熱々の肉を口に放り込む。格式に縛られず、白米をかきこみながら肉と向き合う時間は、まさに大人のための至福の食卓と言える。