なぜ健康食品であるはずの豆腐が、420個もの硬い結石へと姿を変えてしまったのでしょうか。人体の生化学的プロセスを紐解くと、豆腐の食べ過ぎと腎結石リスクを結びつける2つの決定的な要因が浮かび上がります。
尿路結石の約8割を占めるのは「シュウ酸カルシウム結石」です。通常、大豆製品には植物性食品特有の「シュウ酸」が含まれており、豆腐の製造工程では凝固剤として「硫酸カルシウム(石膏)」が使われるケースが多々あります。何さんが毎日大量に摂取していた伝統的な東陽豆腐も、この石膏を凝固剤としてふんだんに使用したタイプでした。
シュウ酸カルシウム結石ができる理由は、体内で処理しきれないシュウ酸とカルシウムが結合することにあります。本来、適量のカルシウムとシュウ酸を同時に摂取した場合、両者は「腸の中」で結合し、便と一緒に体外へと排泄されるため腎臓には害を及ぼしません。しかし、今回のケースでは以下のような水分不足と結石発症のメカニズムが連鎖して最悪の事態を招きました。
極端な水分不足によって尿量が激減すると、尿中の成分濃度が異常なレベルまで濃縮されます。腸管で吸収され血流に乗って腎臓に運ばれた過剰なカルシウムとシュウ酸が、濃縮された尿の中で飽和状態に達し、結晶化を起こしてしまったのです。いわば「高濃度の塩水から塩の結晶が析出する」現象が、男性の腎臓内部で休むことなく繰り返されていたことになります。豆腐そのものが毒性を持つのではなく、「過剰な大豆製品の偏食×極度の水分不足」という最悪の掛け合わせが引き起こした体内人災でした。