大野智が描く絵画作品が美術界で高く評価される最大の要因は、アカデミズムの因習に毒されていない「純粋な表現衝動」と、細部への異常なまでの執着にあります。美術史や既存のトレンドを意識して計算された作品ではなく、「ただ描くことが好きでたまらない」という初期衝動がキャンバス全体からダイレクトに放射されている点が、鑑賞者の胸を打ちます。
技法的な側面を見ても、その卓越したスキルは群を抜いています。絵の具を何層にも塗り重ねて深みを出す重層的な色彩構成、毛先数ミリの筆やペンを自在に操る精緻な点描、スプレーアートによる有機的な飛沫効果、さらには樹脂や粘土を駆使した立体造形まで、表現媒体の幅広さは常軌を逸しています。独学であるがゆえに既存のタブーが存在せず、油彩とアクリル、グラフィティ的手法を躊躇なく融合させるミクストメディアの手腕は、現代美術の最前線に立つ批評家からも高く評価されています。
また、美術評論家やプロの画家たちが共通して指摘するのは、彼の作品に宿る「アール・ブリュット(生の芸術)」あるいは「アウトサイダー・アート」にも通じる凄まじい熱量です。何かに憑りつかれたかのように同じモチーフを反復し、細部を極限まで埋め尽くすスタイルは、打算的なコマーシャリズムからは決して生まれません。自己の内面世界をキャンバスへ純粋に定着させるその姿勢こそが、表現のプロたちを震撼させる決定打となっています。