床材選定の現場において、施主が最も混同しやすいのが長尺シートとクッションフロアの違いです。どちらも塩化ビニル樹脂を主原料とするロール状の床材ですが、その断面構造と設計思想は根本から異なります。
クッションフロアは厚さ1.8mm〜3.5mm程度で、発泡層を挟み込んでいるためクッション性に富み、カッター1本で切断できる施工性の高さが特徴です。しかし、表面のクリア層は0.1mm〜0.3mmと極めて薄く、土足歩行や重量物の引きずり、車椅子の旋回などには耐えられません。ハイヒールのかかとで簡単に凹み、直射日光による紫外線劣化で数年で硬化・ひび割れを起こします。
対して、長尺シート(一般に重歩行用ビニル床シートと呼ばれるもの)は厚さ2.0mm〜2.8mm程度でありながら、発泡層をほとんど持たない高密度な複層構造、もしくは全体が均一な単層構造(ノーワックスシートなど)で作られています。表面の耐摩耗層は強靭で、砂利を踏んだ靴底で踏みつけられても傷がつきにくく、耐光性・耐薬品性にも優れています。これこそが、日常的に数百人から数千人が行き交う店舗オフィス向け重歩行用長尺シートとして、また風雨と紫外線に晒されるマンション共用部ベランダの長尺シートとして選ばれ続けている最大の理由です。
特に屋外や共用廊下では、雨天時の転倒事故を防ぐスリップ防止機能が不可欠です。表面に微細な凹凸意匠を施した防滑性ビニル床シートのメリットは、滑り止め効果だけにとどまりません。雨靴や台車が通行した際の「コツコツ」という衝撃音を大幅に緩和する遮音性能を備えており、分譲マンションにおける居住者の騒音トラブル防止にも決定的な役割を果たしています。