近年の映像エンターテインメントで劇的な成功を収めている海外ドラマを分析すると、「イライラ」の感情表現が作品の牽引力になっていることがわかる。例えば Netflix で世界的な大ヒットを記録した『BEEF/ビーフ』では、あおり運転を発端とした現代人の抑圧された苛立ちとストレスが、キャスト陣の狂気的かつコミカルな表情によって爆発的に描かれた。
また HBO が手掛けた屈指の傑作ドラマ『サクセッション』では、巨大権力を巡る一族の苛烈な愛憎劇の中で、登場人物たちが浮かべる不機嫌な顔や冷酷な微表情が、セリフ以上の緊迫感を生み出している。一流の演者たちは、言葉以上に一瞬の表情筋の緩みや視線の泳ぎで緻密な心理戦を表現してみせる。これが視聴者の没入感を限界まで引き上げる秘密だ。