製作現場そのものが一つの「戦争」だった。ロケ地となったフィリピンを猛烈な台風が襲い、作り込んだ巨大なセットは一瞬で破壊された。主演のマーティン・シーンは撮影中に心臓発作で倒れ、生死の境を彷徨う。膨れ上がり続ける製作費に対し、コッポラは自身の家財やワイン醸造所まで担保に入れ、私財をすべて投げ打った。
「この映画はベトナム戦争についての作品ではない。映画自体がベトナム戦争そのものだったのだ」というコッポラの言葉は、映画史における伝説として語り継がれている。現場の混乱と極限状態は、スクリーン上の兵士たちの疲弊した表情や、徐々に狂気へ蝕まれていく眼光へとそのまま反映された。虚構と現実の境界線が溶解した過酷な撮影現場こそが、この作品に不可思議な魔力を宿らせたのだ。