天地の文として伝わるテキストには地域や流派ごとのバリエーションが存在しますが、最も広く書道手本や寺子屋教材として親しまれた代表的全文を以下に掲載します。堂々たる名詞の連なりは、声に出して読むだけでも独特のリズムを帯びています。
【全文と読み方(ふりがな)】
天地(てんち) 日月(じつげつ) 星辰(せいしん) 陰陽(いんよう)
春夏秋冬(しゅんかしゅうとう) 寒暑(かんしょ) 風雨(ふうう) 雲霧(うんむ) 霜雪(そうせつ)
山川(さんせん) 海岳(かいがく) 草木(そうもく) 鳥獣(ちょうじゅう)
乾坤(けんこん) 父母(ふぼ) 兄弟(けいてい) 夫婦(ふうふ) 朋友(ほうゆう)
仁義(じんぎ) 礼智(れいち) 信(しん) 長幼(ちょうよう) 師友(しゆう)
【現代語訳と詳細な意味】
この文は、大きく分けて「天体の秩序」「気象と季節」「地上の自然」「家族と社会倫理」の4段階で構成されています。
[第1節:宇宙と時間]
天と地、太陽と月、空に瞬く星々、そして万物を生み出す陰と陽の力。春・夏・秋・冬の四季が巡り、寒さと暑さが訪れ、風と雨が吹き、雲と霧が立ち込め、霜と雪が降り注ぐ。
[第2節:地上の生命]
山と川、海と高山が大地を形づくり、草木が生い茂り、鳥や獣たちが息づいている。
[第3節:人間の倫理と秩序]
天と地(乾坤)の営みのなかに人間が生まれ、父と母、兄と弟、夫と妻、そして友人が互いに支え合う。人として守るべき「仁(思いやり)・義(正義)・礼(礼儀)・智(知恵)・信(誠実)」の徳を備え、年長者を敬い、良き師や良き友とともに学びを深めていく。
自然界の壮大さから個人の道徳規範へと自然に視点が収斂していく構成は、初等教育の教材として極めて完成度が高いことがわかります。