インド生まれのキーマカレーに対し、ドライカレーは1910年代の日本で独自に考案された純国産の洋食メニューです。その発祥には、日本の近代海運を支えた豪華客船のドラマがありました。
定説とされているのは、日本郵船が運航していた欧州航路の貨客船「三島丸(みしままる)」の船内食堂で誕生したというエピソードです。長旅で船酔いに苦しむ乗客のために「食欲をそそるスパイスを使いつつ、船が揺れてもスープがこぼれない料理を」と、日本人コックが汁気を極限まで飛ばしたひき肉カレーを考案し、ライスに添えて提供したのが始まりとされています。
揺れる船上という特殊な環境が生んだ知恵は、船客たちの間で大評判となり、やがて陸のホテルや洋食店へと広まりました。海外の食文化を取り入れながら日本人の嗜好と生活様式に合わせて再構築する、まさに日本の洋食文化を象徴するメニューといえます。