「庭のみかんが急に葉ばかり茂って実がつかなくなった」という相談の9割以上は、剪定の時期と切る位置の初歩的なミスに起因しています。みかんの樹体メカニズムにおいて、みかん実がつかない決定的な理由は、春に伸びて前年中に成熟した「春梢(しゅんしょう)」の先端を無差別に切り落としてしまう点に集約されます。
みかんの花芽は、前年の春に発生して充実した枝の先端付近に、冬の低温期間(12月〜1月頃)を経て分化します。落葉果樹の感覚で枝先を揃えるように刈り込んでしまうと、春に咲くはずだった花芽を物理的に100%切除することになり、結果としてその年の開花数はゼロに転落します。
さらに見逃せないのが、樹体内の「C/N比(炭素・窒素比率)」の急激な崩壊です。木を小さく仕立て直そうとして太い枝を一度に何本も切り落とす強剪定を行うと、地上部の葉量(光合成器官)が激減する一方で、地下の根からは窒素分が過剰に吸い上げられます。その結果、木は子孫を残す生殖生長(開花・結実)を完全にストップさせ、失われた葉を緊急回復させるための栄養生長へ全エネルギーを傾けます。これが、みかんの木剪定で失敗する原因の典型例であり、勢いばかり強くて実のつかない暴れ枝が林立する悪循環を生み出します。