作品集『祖父江慎+コズフィッシュ』が出版された際、デザイン関係者の間に走った衝撃は今も記憶に新しい。分厚い図録でありながら、裁断面が斜めにカットされていたり、表紙と中身のサイズが合っていなかったりと、造本そのものがひとつの壮大なブラックユーモアのような構成となっていたからだ。本という形式を自ら解体し、再構築してみせたこの一冊は、同業のデザイナーたちに計り知れない刺激を与えた。
また、筑摩書房をはじめとする主要出版社での仕事においても、彼の革新的なアプローチは遺憾なく発揮されている。文庫本のカバーデザインや全集の装丁において、従来の業界ルールやコスト制限の壁を突破し、数々の伝説的な書籍を世に送り出してきた。文庫の背表紙の色を変えたり、紙質を意図的に変更したりするその手腕は、出版業界における「文庫」というフォーマットの概念そのものを塗り替えたといっても過言ではない。