見かける機会が減ったからこそ、改めて知っておきたいのが和式便所の構造と歴史です。和式便所の前方にある半円状の覆いは「金隠し(きんかくし)」と呼ばれます。この独特な形状と名称の由来には複数の歴史的ルーツが存在します。
有力な説の一つが、平安時代から室町時代の貴族文化に由来する「きぬかけ(衣掛け)」説です。十二単や着物の裾を汚さないよう、前方の木枠に掛けて用を足していた風習が、時代とともに「きんかくし」へと変化したと伝えられています。また、江戸時代に入ると排泄物を肥料として売買する「下肥(しもごえ)」文化が発達し、排泄物を隠す・尿の飛び散りを防ぐ覆いとして機能が洗練されていきました。
正しい使い方の基本は、金隠しがある側を正面にしてしゃがむ向きが正解です。ドアに背を向け、覆いに覆いかぶさるように深くしゃがむことで、前方への飛散を防ぎ、便器後方のトラップへ的確に排泄物を導く設計になっています。足の位置は両脇のステップへ平行に乗せ、トイレットペーパーは詰まりを防ぐために適量ずつ流すのが最低限のマナーです。