尾崎豊が10代の最後に遺した『卒業』の歌詞は、単なる学校教育への反抗にとどまらず、人間が社会化される過程で直面する「自由の代償と自己同一性の喪失」を冷徹に描写しています。冒頭のチャイムの音を思わせるピアノの調べから始まり、校舎の冷たい廊下、画一的な校則、教師たちの無機質な視線が克明に綴られます。
多くのリスナーが注目する「行儀よくまじめなんて 出来やしなかった」というフレーズの後に続くのは、「仕組まれた自由に 誰も気づかずに」という社会構造への鋭利な洞察です。尾崎が歌った「支配」とは、単に学校の規則や教師の抑圧だけではありません。大人が敷いたレールの上で「これが自由だ」と思い込まされ、疑問を持たずに従順な歯車になっていく同世代への焦燥感と、そこから抜け出せない自分自身への苛立ちでした。
ラストサビでリフレインされる「あと何度自分自身 卒業すれば 本当の自分に たどりつけるだろう」という一節こそが、本作の真のテーマです。学校という箱から出ることだけが卒業なのではなく、人生の中で貼り付けられる無数のラベルや固定観念を脱ぎ捨て、本当の自己を獲得するための「内面的な闘争の旅」を意味しています。