本作の圧巻は、中盤に配置された12分間に及ぶワンカットの会話劇だ。台本にして約10ページ。一切の誤魔化しが利かない極限状態のなかで、二人は完璧な間合いと息遣いでセリフを掛け合っていく。
監督のインタビューによれば、このシーンの撮影にあたり綿密なリハーサルはあえて行われなかった。互いの手の内を見せないまま本番に臨んだ結果、スクリーンには本物の葛藤と疑念が刻み込まれることとなった。「清水さんの包容力があるからこそ、自分の限界を超えた表現を引き出してもらえた」と山下が語れば、清水もまた「彼女の目を見た瞬間、台本を超えたリアルな感情が湧き上がってきた」と振り返る。