サンフランシスコ平和条約の条文構造は、現在の東アジアにおける領土問題の火種を数多く残しています。その最たる例が条約第2条b項と第3条の規定です。
条約第2条b項において、日本は「台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」と定められました。しかし、重要なのは「どこに返還するか」という帰属先が条約上に明記されなかった点です。これがいわゆる台湾地位未定論の国際法上の根拠となっています。
一方、沖縄および尖閣諸島の領有権に関しては、条約第3条において北緯29度以南の南西諸島としてアメリカの施政権下に置かれました。日本は潜在的主権を維持し、1972年の沖縄返還協定によって施政権が日本に返還されています。
しかし、中華人民共和国および台湾側は「尖閣諸島は台湾の付属島嶼であり、日清戦争末期に日本によって不法に奪われた」と主張します。日本側が「サンフランシスコ平和条約第3条に基づき米国の施政権下に置かれ、第2条で放棄した台湾には含まれていない」と反論する根拠は、まさにこの条約の文言と戦後処理の枠組みに基づいているのです。