ネット上や一部のファンの間で時折見られる誤解に、「森進一は冬のリヴィエラのヒットによって演歌界から孤立し、追放されかけたのではないか」という言説があります。しかし、当時の記録や業界動向を検証すると、これは明らかな誇張であり事実とは異なります。
確かにリリース当初、古くからの熱狂的な演歌ファンからは「森進一がコブシを捨てて軽い歌を歌っている」「演歌を裏切った」という批判的な声が少なからず寄せられました。また、演歌専門の有線放送チャートでも最初は反応が鈍く、従来のプロモーション手法が通用しなかった現場の苦悩は存在しました。
しかし、風向きを決定的に変えたのが1983年の『第34回NHK紅白歌合戦』でした。森進一は和装ではなく、スタイリッシュな黒のタキシード姿でステージに登場。洗練された立ち居振る舞いと抑制の効いた歌唱で『冬のリヴィエラ』を披露し、お茶の間に強烈なインパクトを与えました。
この紅白での歌唱をきっかけに、レコード購買層ではなかった若者世代やニューミュージックファンがレコード店へと殺到。結果としてオリコンチャートでトップ10入りを果たし、30万枚を超えるロングセラーを記録しました。演歌界から追放されるどころか、森進一は「演歌歌手でありながら最先端のポップスも歌いこなす唯一無二の国民的エンターテイナー」としての地位を確立したのです。