1982年、NHKで放映されたドキュメンタリー番組『NHK特集・土光臨調 ~85歳の執念~』は、日本中に強烈な衝撃を与えました。映し出されたのは、当時85歳にして「ミスター行革」として国政改革の先頭に立っていた土光敏夫の私生活です。夕食の食卓に並んでいたのは、一匹のメザシ、菜っ葉のお浸し、玄米ご飯、そして味噌汁という、およそ経済界トップとは思えない質素な献立でした。
この映像は「メザシの土光」として瞬く間に列島へ広がり、国民の心を強く揺さぶりました。当時、増税を回避しつつ政府の無駄遣いを徹底排除する行財政改革を推進していた土光敏夫。国民に負担や痛みを強いる前に、誰よりも自らの生活を切り詰め、無駄を削ぎ落としていた姿が、圧倒的な説得力と信頼を生んだのです。
単なるポーズやパフォーマンスではなく、80歳を過ぎても朝5時に起き、冷水摩擦を行い、通勤電車に揺られて現場へ向かう生活が生涯を通じて当たり前でした。私利私欲を完全に排し、公のために尽くすその生き様こそが、時代を経てもなお人々を魅了し続ける最大の理由です。