国土地理院が定める地図記号は、決して一度作られたら終わりの固定的なルールではありません。その根底にある基本理念は「国土の現状を最も正確かつ実用的に表現すること」です。地形図上の限られたスペースにおいて、利用価値の低くなった対象を整理し、新たに社会的重要性が増した施設や土地利用を記号化する改訂作業が定期的に行われています。
地図記号の変更経緯をたどると、明治時代に陸戦用の軍用図として整備が始まって以降、戦後の高度経済成長期、そしてデジタル化が進む現在に至るまで、幾度もの転換期が存在しました。かつては軍事拠点や主要な農産地を把握することが国防・経済上の最優先事項でしたが、現代では「防災・減災」「少子高齢化」「国際観光」といった喫緊の課題に応える情報提供へと主目的がシフトしています。
利用者のニーズに応じた公募や有識者会議を経て正式決定されるため、地図記号の新設理由を紐解く作業は、そのまま日本の近現代史の歩みを読み解く作業と同義といえます。