国際儀礼(プロトコル)において、現在世界で公式に「Emperor」の英訳が用いられている君主は、日本の天皇陛下(The Emperor of Japan)ただ一人です。この背景には、歴史的な外交上の判断と日本の伝統が深く関係しています。
幕末から明治維新にかけて、近代国家としての体裁を整えようとしていた日本政府は、欧米列強と対等な外交関係を構築する必要に迫られていました。当時の世界には、大英帝国(インド皇帝を兼位)、ロシア帝国、ドイツ帝国、そして隣国の清朝など「帝国」が数多く存在していました。
日本は古くから独自の元号を用い、中国王朝の朝貢体制(冊封体制)に組み込まれることなく独自の主権と祭祀権を守り続けてきた歴史があります。欧米列強の国王や皇帝と対等に渡り合い、日本の最高権威の独立性を示すために選ばれた公式英訳が「Emperor」でした。
20世紀の二大世界大戦や脱植民地化の流れの中で、世界各地の帝国は次々と崩壊・立憲王国化していきました。その結果、2026年の現在においても古来の世襲王統を絶やさず継承している日本の天皇が、国際社会における現役唯一のエンペラーとなっています。主要国の首脳が集まる国際会議や式典でも、外交プロトコル上、天皇陛下には最も高い敬意が払われます。