法廷での対立が泥沼化するかと思われた中、2026年11月に事態は急展開を迎えます。日本製鉄が、トヨタ自動車に対する特許侵害訴訟をすべて取り下げる手続きを行いました。なお、模倣元と名指しされた中国の宝山鋼鉄に対する訴訟はそのまま継続するという選択でした。
この決断の裏には、カーボンニュートラルの実現に向けた現実的な思惑がありました。自動車の脱炭素化には、製造時のCO2排出量を大幅に削減したグリーンスチールの採用が欠かせません。鉄鋼業界と自動車業界が法廷で争い続ければ、欧米や中国の競合勢力に脱炭素戦略で遅れをとるという危機感が両社の経営陣に共有されたのです。
日本製鉄側は「日本の自動車産業全体の国際競争力を維持し、脱炭素に向けた協業を優先する」という大義名分を掲げ、実利をとる形でトヨタとの直接対決に幕を引きました。