陸上競技の100m走において、レース展開は「一次加速」「二次加速」「トップスピード維持」「減速」の4局面に分類されます。ベルリン大会の公式解析データによると、ボルト氏の100メートルにおける速度推移は以下の通りでした。
スタート直後の0〜20m区間を2.89秒で立ち上がった後、20〜40mを1.75秒、40〜60mを1.67秒と急激にスピードを上げ、60〜80mで最速の1.61秒をマーク。最後の80〜100m区間は1.66秒(時速約43.37km)でフィニッシュしています。
テレビ中継などでは「ボルトは後半にぐんぐん加速している」ように見えましたが、スポーツ科学のデータ分析では、実際には80m以降わずかに減速していたことが判明しています。それにもかかわらず他選手を引き離して見えたのは、ライバル選手たちの減速幅が大きかったのに対し、ボルト氏はトップスピードの維持能力が極めて高く、減速幅が最小限に抑えられていたためです。
この異次元の走りを支えたのが、類まれなピッチ(歩頻)とストライド(歩幅)の黄金比でした。一般的なスプリンターが100mを44〜46歩前後で走るところ、身長196cmのボルト氏はわずか41歩で完走。1歩あたりの平均ストライドは約2.44m、トップスピード時には最大2.7m超に達していました。大柄な体躯でありながら、小柄な選手に匹敵する毎秒4.3〜4.4歩のピッチを維持し続けたことが、前人未到の記録を生み出す決定打となったのです。