建築からプロダクトデザインに至るまで、黒川雅之の手がける領域に目線的な垣根は存在しない。一般的に、巨大な構造物を構築する建築の思考と、手で触れる小物を形作るインダストリアルデザインの思考は隔てられがちだ。しかし、彼はその双方を「命を宿す器づくり」という一つの地平で捉えてきた。
彼の思考法の核にあるのは、東洋的な無常観と素材の本質への深い眼差しだ。西洋のモダンデザインが合理性と機能美を追求したのに対し、黒川は「未完成の美」や「関係性のデザイン」を提唱した。物質そのものが持つ声に耳を傾け、不要な装飾を削ぎ落とした先に見えてくる静寂。この美学こそが、分野を横断する革新性の源泉にほかならない。