広告社会学のフレームワークにおいて、アイフルの「凛とした女将」シリーズは、「心理的リアクタンス(反発心)の無害化」における金字塔と評価されています。
人間は、他者から「お金を借りてください」「当社のサービスは素晴らしいです」と一方的に説得されると、無意識に警戒心を抱き、心理的な抵抗感(リアクタンス)を強めます。特に消費者金融という商材は、社会的なスティグマ(負の烙印)や警戒を持たれやすい特徴があります。アイフルの制作陣が仕掛けたのは、「大女優が突飛な設定で正論(愛はあるのか)を説き、情けない男性が恐縮する」という純粋なコントの構図です。
視聴者はテレビを見ながら「また大地真央が無茶苦茶なことをやっている」「今野の顔が面白い」と笑うことで、防衛本能が完全に解除されます。その結果、「アイフル=怪しい金融会社」という旧来の警戒感は「アイフル=あの面白いCMの会社」という極めて好意的な認知へとすり替わります。これこそが、ブランディングにおける「認知的不協和の解消」であり、8年以上にわたって競合他社を圧倒し続けている最大の要因です。
「そこに愛はあるんか」という言葉の真の価値は、企業のメッセージでありながら、現代の消費社会において希薄になりがちな「人間関係の誠実さ」を、強烈な皮肉とユーモアで人々の心に再認識させた点にあると言えます。