マッサマンカレーのルーツを辿ると、非常に深い歴史のドラマにぶつかる。名前にある「マッサマン」とは、アラビア語やペルシャ語に由来する「ムスリム(イスラム教徒)」を意味する言葉だ。17世紀にタイ(旧シャム)へ交易で訪れたペルシャ商人や、隣国から渡ってきたマレー系ムスリム料理の技術が結実して誕生した。
さらに注目すべきは、これが単なる庶民の味にとどまらず、洗練されたタイ宮廷料理として受け継がれてきた点にある。19世紀初頭、シャムの国王ラーマ2世は、自身が愛した女性が作るマッサマンカレーの芳しい香りと深い味わいを称える詩を詠んだ。伝統的なタイ料理のハーブ文化と、中東やインド由来のドライスパイスが時空を超えて融合した歴史の傑作なのだ。