なぜアニメは「鷲巣麻雀」の決着までを描き切れなかったのか。最大の要因は、原作者である福本伸行の描くスローテンポかつ濃厚な心理描写の進行速度にある。マッドハウスがアニメ化を手掛けた2000年代半ばの時点で、原作の鷲巣麻雀編は終わりがまったく見えない状態だった。1局の数巡を進めるのに数か月を要する展開を、2クール全26話という限定された放送枠に収めるのは物理的に不可能だったのだ。
その結果、アニメ後半戦では鷲巣の狂気が爆発する一部の攻防や地獄巡りのエピソードが未映像化のまま残されることとなった。しかし、アニメ制作チームは強引なオリジナル展開で無理やり完結させる道を選ばなかった。あくまで原作の持つ重厚な空気感を尊重し、赤木しげるという存在の不気味さと美しさを最大限に際立たせるポイントで「切る」ことを決断したのだ。この潔いカットの裏には、原作への深い敬意と映像作品としての意地があった。