コロンビア共和国の首都ボゴタ。富裕な実業家の家に生まれたニコラス・ゴメス・ダビラは、生涯のほとんどを自邸の巨大なライブラリの中で過ごした。膨大な稀覯本に囲まれた孤高の思想家は、アカデミズムの権威とも政治的セクトとも距離を置き、自らの思考を極めて短文の格言(ショリア)として書き残した。
かつては知る人ぞ知る存在に過ぎなかった彼の思想史における位置づけは、今や劇的な変貌を遂げている。米国のコロンビア大学をはじめとする名門研究機関でも再評価のシンポジウムが相次ぎ、彼が数十年前に指摘していた「民主主義の変質」や「技術至上主義の罠」が、まさに現代の現実そのものであると証明されたからだ。静寂の中で磨かれた言葉は、半世紀の時を経てグローバルな警鐘へと変わった。