1970年代中盤の傑作『ばるぼら』は、手塚作品の中でも異彩を放つエロティシズムの結晶である。自堕落で謎めいたヒロイン・ばるぼらの淫靡な魅力と、彼女に狂わされていく芸術家の愛憎劇は、退廃的な美学に満ちあふれている。
本作において描かれる裸体や胸のラインは、見る者を幻惑する魔力を持っている。それは単なる性的な視覚刺激ではなく、芸術家の創作意欲を掻き立て、同時に精神を崩壊へと導く「ミューズの誘惑」そのものであった。官能描写をここまで芸術的デカダンスの領域に高めた例は、当時のコミック界においても類を見ない。