夕暮れ時、市立福山のグラウンドには金属バットの快音と並んで、タブレット端末を掲げて選手にアドバイスを送るスタッフの姿があった。限られた練習時間と狭いスペース。その不利を跳ね返すためにチームが導入したのが、最新の球質測定器とバイオメカニクス解析だった。各投手の回転数や変化球の軌道を数値化し、野手陣は相手投手の配球パターンを徹底的にデータベース化。勘や精神論に頼らない「根拠のある一球」の追求が、名門校の投手を徐々に追い詰める武器となった。
「私学と同じ練習量を確保することは物理的に不可能です。だからこそ、1球に対する集中力と情報量で勝負するしかなかった」とチーム関係者は語る。練習時間は平日わずか2時間半。その限られた時間の中で行われるフリー打撃では、カウントや走者状況を細かく設定した実戦形式が徹底されている。選手たちは自ら動画を確認し、その場で修正点を話し合う。指示待ちの選手は一人もいない。自律した思考を持つ球児たちが、グラウンド上で驚異的な対応力を発揮した。