物語の軸となるのは、魔王討伐を果たした「かつての勇者一行」と、彼らの遺志を継いで北の果てを目指す「現在の旅の仲間たち」という二つの世代だ。時間の流れに対する感覚が人間とは決定的に異なるエルフの魔法使いフリーレンを中心に、それぞれの人物像が立体的に構築されている。
かつての勇者ヒンメルは、ナルシストな言動の裏に揺るぎない慈愛と強靭な精神を秘めた人物だった。彼が遺した言葉や行動の痕跡は、没後50年以上が経過した世界でも衰えることなく、フリーレンの心を動かし続けている。また、酒好きの僧侶ハイターや、寡黙ながら圧倒的な武力を誇る戦士アイゼンなど、旧パーティの存在感は回想シーンの枠を超えて物語全般に深い影を落としている。
一方で、現在の旅をともにするフェルンとシュタルクの成長劇も大きな見どころだ。ハイターに引き取られ、フリーレンの弟子となったフェルンは、圧倒的な魔法の行使速度と沈着冷静な洞察力を併せ持つ。アイゼンの弟子であるシュタルクは、臆病な一面を見せながらも土壇場で驚異的なタフネスを発揮する。未熟な若者ふたりが旅を通じて互いの距離を縮めていく姿は、悠久の時を生きるフリーレンの視点に温かな色彩を与えている。