明石焼きの発祥は江戸時代末期から明治初期に遡ります。地元・明石で「玉子焼」と呼ばれるこの料理は、一般的な大阪風たこ焼きとは成り立ちも構造も全く異なります。最大の特徴は、小麦粉よりも卵の比率が圧倒的に高く、つなぎとして「じん粉(浮き粉)」と呼ばれる特殊なデンプン粉を使用している点です。
じん粉とは、小麦粉からグルテン(粘り気のもと)を取り除き、純粋なデンプン質だけを精製・乾燥させたもの。加熱してもグルテン特有の弾力が出ず、熱を通すと半透明で極めて柔らかいゲル状に固まる特性を持っています。明石焼き特有の「箸で持ち上げると崩れそうなほど柔らかく、口の中でとろける食感」は、このじん粉の性質とたっぷりの卵、豊かな鰹出汁が組み合わさることで生まれます。
名店と呼ばれる店舗の生地配合では、卵3個に対してだし汁300ml、じん粉30g前後という極限まで水分の多い比率が採用されています。この絶妙なバランスこそが、表面は香ばしく、中は茶碗蒸しのように滑らかな舌触りを生み出す絶対条件です。