かつての彼女は、どこか完璧主義的で、すべてを一人で背負い込むきらいがあった。東京五輪で見せた「相手に1ポイントも与えない完全優勝」は偉業であったと同時に、彼女自身を極限の緊張感の中に閉じ込める金網でもあった。
しかし、パリでの挫折をきっかけに、彼女のメンタリティは大きく変化した。コーチ陣やスパーリングパートナー、そして応援してくれる人々との対話をこれまで以上に大切にするようになり、素直に弱音を吐き、助けを求める強さを身につけたのだ。
「一人で戦っているわけではない」という真の実感。この精神的な成熟こそが、土壇場での焦りを消し去り、試合中の冷静沈着な判断力を生み出している。ピンチを迎えてもニヤリと笑みを浮かべる余裕すら、今の彼女にはある。