関東の濃口醤油を使った黒っぽいおでんや、関西の塩気が際立つおでんとは一線を画すのが金沢の出汁だ。その骨格を成しているのは、金沢の港町・大野で作られる淡口(うすくち)醤油と、贅沢に使われる昆布や煮干し、鰹節の出汁である。見た目は驚くほど透明感がありながら、一口飲むと驚くべきコクと深みが広がる。
「うちの出汁は、継ぎ足しではなく毎朝引き直す」と語る老舗店主の言葉に、金沢おでんの本質が隠されている。具材から出たエキスが時間をかけて出汁に溶け込み、夕方にはその日最高の状態へと仕上がる。澄み切った黄金色のスープは、素材の味を極限まで引き出すためのキャンバスなのだ。