1947年に導入された高額納税者公示制度は、もともと戦後の混乱期における申告納税制度の定着と、不正脱税の抑止や市民による相互監視を狙いとしたものでした。当初は所得金額そのものが公示されていましたが、1950年以降は「所得税額」を張り出す形式へと移行。毎年5月の公示日は、新聞各紙が一面や特集号で大々的に報じる国民的行事のような扱いを受けていたのです。
しかし、2000年代に入ると状況が一変します。最も大きな引き金となったのは、犯罪誘発への懸念でした。資産状況や自宅住所が公に特定されることで、公示対象者やその家族を標的にした強盗、誘拐、悪質な脅迫・詐欺被害が全国で多発。著名人のみならず、一般の企業経営者や開業医などからも強い反発の声が上がりました。
さらに、2005年4月に個人情報保護法が全面施行されたことが決定打となりました。国が個人のプライバシー情報を率先して公開し続けることの法的整合性が厳しく問われ、税制改正に伴い2006年(2005年分申告)をもって公示制度は廃止を迎えました。これ以降、公式な納税ランキングは完全に姿を消すことになります。