2020年代に入り、クランク・デビルの遺伝子は思わぬ形で世界中に拡散した。デジタルネイティブ世代が再発見した新ジャンル「Phonk(フォンク)」の爆発的流行である。
ロシアや東欧の若手プロデューサーたちが、90年代メンフィス・ラップのカセット音源を再掘削(ディグ)し、強烈なカウベル音と現代的な重低音を加えた。これが「Drift Phonk」としてTikTokやYouTubeで爆発的な再生回数を記録する。
夜の高速道路を滑走する車の動画。ネオンサイン。狂気的なドリフト映像。それらの背景には、常に30年前に作られたクランク・デビルのボイスサンプルが鳴り響いている。時代や国境を越え、暗黒のサウンドが再び世界を侵食した瞬間だった。