テレビドラマにおける彼女の真価を決定づけたのが、TBSテレビの日曜劇場『ブラックペアン』シリーズだ。二宮和也演じる孤高の天才外科医・渡海征司郎や天城雪彦が激しい嵐を巻き起こす中、葵わかなが演じた看護師・花房美和は、視聴者にとって唯一無二の「良心の錨」として機能した。
医療現場の生々しい緊張感と権謀術数が渦巻く重厚な群像劇。派手なセリフや大仰な身振りではなく、瞳の揺らぎやわずかな呼吸の乱れで心情を雄弁に物語る。確かな技術に裏打ちされたリアリティが、劇中の緊迫したオペ室に確固たる説得力を与えていた。
名だたる重鎮俳優たちが火花を散らすTBSテレビの看板枠において、埋もれることなく独自の輪郭を刻み続けた経験は、彼女の演技のレンジを格段に広げる契機となった。