加藤和彦が遺書の中で吐露した最も深い絶望、それは「音楽の価値の低下」だった。彼は、自分が作りたいと思う美しい音楽と、世間が求める消費される音楽との乖離に深く苦しんでいた。かつて彼が紡ぎ出したきらびやかなメロディは、時代が進むにつれて「効率」や「分かりやすさ」の波に飲み込まれていく。
「世の中は音楽を必要としていない。もう僕には作るべき音楽がない」。そう語った彼の言葉は、単なるうつ病の産物だったのだろうか。それとも、音楽の本質が失われていく未来をいち早く察知した、アーティストとしての限界だったのだろうか。彼の死から十数年が経った今、この問いは重くのしかかる。