『大往生』の大きな特徴は、小難しい哲学理論や医学的な終末期医療論を振りかざさない点にあります。全国津々浦々を旅し、ラジオ番組を通じて市井の人々と対話を重ねてきた永氏だからこそ拾い上げることができた、無名のお年寄り、職人、僧侶、医師、看護師たちの「生の言葉」がオムニバス形式で敷き詰められています。
本書のあらすじと構成は、「死」「老」「病」「生」といったテーマごとに、短いエピソードや印象的なセリフがリズミカルに並ぶスタイルを取っています。そこには、病院の天井を見つめながら過ごす最期の切なさだけでなく、長年連れ添った夫婦の洒脱な会話や、死の間際に見せる人間の滑稽さやたくましさが凝縮されています。
『上を向いて歩こう』『こんにちは赤ちゃん』などの作詞で知られ、膨大な著書を持つ永氏の代表作となった理由は明快です。本書の根底には「見事な死に方(大往生)を目指すのではなく、今を精一杯に生ききることこそが結果として良い死につながる」という、逆説的でありながら力強い肯定のメッセージが通底しているからです。