長年、王道少年漫画におけるヒロインの役割は、主人公のサポートや戦いの渦中で見守る存在として描かれることが少なからずあった。しかし、お茶子が提示した価値観は、そうした固定観念を根底から覆すものだった。
群衆の冷酷な視線や恐怖、疲弊しきった緑谷出久のボロボロの姿を前に、彼女が大声を張り上げて叫んだあの雄英高校屋上でのスピーチ。市民に向かって「ヒーローも泥まみれになって戦う普通の人間なんだ」と訴えかけたあの瞬間、彼女は単なる戦闘要員としてではなく、壊れかけた社会とヒーローを結ぶ「精神的な安全網」となった。無重力(ゼログラビティ)という彼女の個性は、単に物体を浮上させるだけでなく、人々の心に重くのしかかる絶望の重圧を取り除く象徴的な意味をも帯びていたのだ。